「夕立」 突然の雷に驚き見上げれば 顔を叩くように降り始める雨 夕立に追われて逃げる田圃の畦道 雷の轟音に怯えて逃げまどい 息を切らせて地蔵堂に飛び込む 濡れた服を手ぬぐいで拭き 一息入れると遠くに女の悲鳴 目を凝らすと 雨のカーテンの向こうから 一人の女が真っ直ぐこちらに駈けてくる 転がり込むように地蔵堂に駆け込んでくる女 何事か独り言で喚いていたが 先客の私に気づき途端におしとやかになる 互いに挨拶し合う小声と小声 まぁなんだからと手ぬぐいを差し出す私に小声でお礼を言いながら 顔の周りを拭い始める 塗れネズミ彼女の素肌にまとわりつく 薄手のブラウス 下着の線も露わになって 目のやり場に困ってしまう 私の目線に気づいたか ハタと目が合い咄嗟に目線を外に移したが 自分の姿を顧みて恥ずかしがる彼女 外は雨 このまま雨が降り止んで欲しくないと思う夏の日の暑い午後 藤次郎正秀